学校教員から大学教員になるQ&A

学校教員から大学教員になりたい人のためのヒントをQ&A形式で書くブログです。

Q.博士号は必要ですか?(40代高校教員)

Q.JRECINで求人を見ていたところ、「博士、又は修士の学位を取得していること、又はそれに準ずる教育研究業績を有すること。」とありました。私は、大学卒業後、修士課程に進み修士号を取得。その後高校の教員になりました。大学の教員になるには博士号を取る必要があるでしょうか。教員をやめて、博士課程に通おうか迷っているのですが。(40代、高校教員)

 

A.恥ずかしながら、私も修士号しかもってません。教育学は理系を中心とした他分野よりは修士+研究・教育業績のヒトが多いです。

 

こんにちはツバサ教授(現実には講師)です。

博士号はもちろん持っていた方が良いです。いわゆるストレートで修士・博士と進み、旧帝国大はもちろんのこと、国立大学に就職するような方は博士必須の時代といってもよいでしょう。

 

しかし、このブログがターゲットとしている、学校教員で大学教員を目指すというパターンでは、学校教員時代に、どれだけ研究あるいは実践研究の業績が積めるかが勝負だと思います。

学校教員出身のヒトを採用する場合、実践ができ実践の研究業績があるということを期待しているということもあるわけですからね。

理論研究ができる人が欲しいポストはそもそも、学校教員出身者はいらない。博士号当然。なわけです。

 

ですから、学位は修士しか持っていなくても、在職中に、実践に基づいた論文、著書(あるいは学会誌に載るような論文)が複数あれば、大学教員になれる可能性はあると思います。

 

教員をやめて博士課程に進むことは私はお勧めしません。

率直に言って、就職には運が左右する部分が大きいので、博士号をとっても大学教員になれるかわかりませんし、博士号を取るのに何年かかるかわかりませんので、辞めない方が良いように思います。

修士号をもっているならば、教員を続けながら、研究業績を積み、公募にも応募し続けるのが良いように私は思います。

 

ただ、院に入れば教授との接点ができ、その後の仕事や研究業績につながるというメリットは考えられます。その教授も教育実践研究をしていれば、実践家であるあなたの価値は高いですので、重宝してくれるでしょう。そのあたりをどう考えるかですね。

 

(ちなみに、学士しかない方は、教育学界の多くの人があなたを知っている!くらいのスター教師&文字業績がある、必要があると思ってください。そうでなければ、修士号は取るべきです。休職して大学院研修が認められる自治体に務めてらっしゃるようであれば、一考の価値ありです。)

Q.特任教授ってかっこいいですね。求人情報をみるとこれはいけそうかもと思ったので私も大学教授になれそうですね?(60代 校長)

Q.JRECINで求人情報を見たところ、某私立大学の実習指導センターの特任教授の募集がありました。特任って「警視庁特命係」みたいな感じでかっこいいですね。求人情報をみると「学士可。学校現場経験20年以上の方求む」という感じだったので、私に当てはまり、これはいけそうだと思いました。このようなポストならば、私も大学教授になれそうですよね?研究もバリバリして日本の教育界を変えていきたいです。(60代 校長)

 

A.特任教授は、名前は格好いいですが、一般的な教授とは職域や待遇がまったく異なります。

 

こんにちはツバサ教授です。

「特任」の在り方は教育分野に絞っても、大学によって違うようなので一概には言えないのですが、一般的な教授としてイメージするのはおやめください。

ただ、学校教員から大学教員へのキャリアを考えるならば避けては通れない重要な職種です。

 

「一概には言えないのですが」の前提で以下お読みください。

 

今回の求人では、教育実習センターの特任教授を募集されているとのことでした。

実習センターとは、学生が教育実習に行くための事務や事前・事後、実習中の指導を担っている部署です。

そこで、現場の経験を生かして、実践的な指導をすることを求められています。

また、教員採用試験対策(特に2次の模擬授業や面接の対策)を期待されている大学も多いようです。

 

そのため、研究と教育を本務としている専任の大学教授とは異なる職種です。

 

一般的に、特任は研究は業務に入っていません。教育のみを期待されています。個人研究費も支給されない大学が多いのではないかと思います。

 

一般的に、特任は任期付きです。1年あるいは数年の契約です。専任の場合は、数年のテニュア・トラック(任期なしに移行する前の試用期間)があったとしても任期なしで、定年まで勤められます。

 

一般的に、9時~17時など定時の時間勤務です。(専任の多くは裁量労働制です。)

 

一般的に、個人研究室はなく、実習センターのような部署に、学校の職員室のような形で勤務します。

 

一般的に賃金は専任教授よりも安いです。大幅にと思っておいた方が安全です。

 

相談者様が、後進の学生の指導がしたい。実習や教員採用試験の指導がしたい!ということであれば、是非ご活躍いただきたいです。定年後に自分の力を生かして働きたいからと考えてらっしゃる場合も、お力を発揮いただけると思います。

 

また、もし、相談者様が、専任の大学教授を目指しているとしても、そのステップになる可能性はあります。

大学における教歴として扱われますし、大学の研究紀要に投稿する権利あるいは、実習センターで独自に紀要を出している場合も多いので研究業績を積むことができる可能性があるからです。

 

ただ、率直にいって、60代で少し研究業績を積んだだけでは、専任のポストに滑り込むことは難しいです。そのようなキャリアを目指して入ってこられた60前後の退職校長(副校長)を3人知っていますが、3人ともいまのところ専任の教員にはなれていません。

専任教員に就いてからさらに研究業績を増やしてくれるであろう若手と比べて、相当厳しいです。

 

というわけで、実習センターのような特任のポジションは、

①(不安定で、待遇も良くなさそうですが)最後のキャリアとして、後進を育てる教育がしたい方

②若手の学校教員(30代くらいまで)で大学における教歴と研究業績を積みたいので、とりあえずでも大学に入りたい方

(このブログのターゲットからは外れますが)③実践研究を盛んにやっているポストドクター等で、専任のポストを狙っている方

のポジションといえると思います。

 

一般の人には「警視庁特命係」のように見えるかっこいい「特任教授」ですが、(専任の)大学教授とは大きく異なり、役割は限定されているのです。

 

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以下、ちなみに……

 

ちなみに、教育学以外の分野で「特任教授」として盛んにテレビに出演され、ニュースのコメンテーターを務めてらっしゃる方をよく見ます。

この方々も研究は職務にはいっておらず、率直にいって、大学の「広告塔」がメインであるケースが多いと思います。講義もあまりしていない場合が多いのではないでしょうか。(もちろん多いということで、特任でも、しっかり大学で研究も教育も担っている方もいらっしゃるかもしれません。)

 

ちなみに国立大学の場合は、「実習センター」のような組織でも専任の教員のポストがしっかり設けられている場合があります。ここには実践研究を盛んにやっている研究者が座っていることが多いです。まれに、学校教員出身のスター選手がいらっしゃることもありますが、あくまでまれだと思います。

 

ちなみに旧帝国大学のような研究大学の教育学分野における、特任講師、特任助教というポストは、その大学出身のいわゆるポストドクターが務めていることが多いです。

これは、企業などからの寄付金は入った時などに、臨時で(すなわち任期付きで)ポストが発生したために、専任の大学教員になる前の状態の若手がそのポストに入るからです。

 

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大学によって、違うかもしれませんので、違う見方を持ってらっしゃる、教育関係大学教員の方がいらっしゃいましたら、コメントしていただけると幸いです。特に、地方は違うのかもしれないなと思いつつ、狭い経験の範囲で話している可能性がありますので、気になっています。

※本ブログ的には、基本的には教育分野の特任に絞って展開しています。

Q.大学の先生になるためにはやはりコネですか。コネですよね?(50代小学校副校長)

Q.大学の先生になるための求人情報はどこで手に入れたのですか。やはり、コネでなったんですか。コネがなければ学校の先生から大学の先生にはなれないですよね。やっぱり世の中コネですよね?あなたもきっとコネですね?私もなりたいけど、コネがないから無理ですね。(50代小学校 副校長)

 

A.いいえ、公募です。ジェイレックイン!です!

毎日みていました。今も毎日みています。ジェイレックイン癖です。大学院生にもこの癖保有者は多いようです。

 

皆さん、JRECIN(ジェイレックイン)はご存じでしょうか。

大学教員の公募情報はここにでます。

 

この求人情報は毎日0時に更新されます。(日曜日と祝日を除く)

https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorSearch?fn=1&bg1=00002&sm1=00008&bgCode1=00002&smCode1=00008

(JRECINの専門分野「教育学」のページ↑)

 

ので、私は毎日0時に見てました。

 

その癖が抜けきらず、今も毎日みています。

今の大学は気に入っているので、一生ここでもいいのですが、癖ですね。あと非常勤で条件に合うものがあればやりたいなという気持ちもあります。

 

大学教員になりたい人は、このページをとにかくみましょう。そして、どんな専門分野で募集されているのかをつかむことが重要です。

 

ちなみに、ジェイレックインに載せずにコネだけで人を引っ張ってくる大学もあるのですが、それは、引っ張れるだけの大学としてのブランド力があるわけです。

また、引っ張られる側も相当の実績があるわけです。

 

そう考えると、相当の研究業績がなければ引っ張られないはずであり、学校教員から大学の教員になる1大学目でコネ採用は稀だと思います。

来て欲しい人に、大学側(大学の教員側)からアプローチするのがコネ採用であり、なりたい側の人が大学側にアプローチして作るのは採用へのコネではないわけです。

 

その意味でも、コネコネいったり、コネがないからなれないと考えるのはよしましょう。研究業績を積んで公募で勝ち取るのです!

 

私は前任校・現認校の大学で採用人事にも携わらせていただきましたが、教育学の分野は比較的、純粋な公募が多い分野なのではないかなと体感しています。

 

 

そうはいっても……(やはりこうきたか!人事に「そうはいっても」はお決まりだ!)

 

まぁ、「公募」なのだけど、実はこの人が欲しいということが強く決まっている公募もあるようです。その場合、師匠の推薦や、現職の大学教員と知り合いであることがモノを言ったりするわけで、そういう意味ではつながりもあった方が良いものではあります……。

 

学会や研究会などでつながりを作ることは無意味ではありません。大学院時代の先生と仲良くすることも。非常勤講師は公募しないことも多く、そのような声をかけてもらえるかもしれませんしね。(学校教員現職のまま非常勤は難しいかもしれませんが。)

 

Q.あなたは学校の先生から大学の先生になったんですか(40代小学校教員)

A.はい。左様でござる。

 

はじめまして。ツバサ教授(仮)です。

大学院修士課程修了後、数年小学校教員を務め、現在は大学の教員です。

 

あ、本当の職階はまだ専任講師です。ブログネームがツバサ教授です。

 

このブログでは、学校の教員から大学の教員になるためのヒントをQ&A形式で書きます。同じようなキャリアを目指す人の参考になればと思って始めました。

実は、似たようなブログを始めるのは3度目です……。今回こそ続けるぞっ!3度目の正直っていうしね。

 

前回までのブログが続かなかった理由の自分的考察

  厳密に、体系的に書こうとしすぎたからです。

最終的には本にして出版しちゃうぞ!みたいな気持ちで気負っていました。

 

今回も、もちろん、私及び私の周りの同様キャリアの事例を踏まえて、嘘のないことを書くよう心がけますが、あまり何度も校正したり、全体の体系や構造は気にしたりしないで、思いついたことを書こうと思っています。

 

Q&A形式で書きますが、当面、Qも私が書くつもりです(笑) (質問者プロフィール(「40代小学校教員」)は架空です。)

 

同じようなキャリアを目指す学校の先生!コメント欄で是非ご質問ください。

ちょっと興味のある教育学部生のあなた!質問ください。

別に関係ないけど、なんか聞いてみたい方もどうぞどうぞ。質問ください。

 

良かったらまた覗いてくださいね。毎日更新……、いや、とりあえず週3更新を目標にがんばります。