学校教員から大学教員になるQ&A

学校教員から大学教員になりたい人のためのヒントをQ&A形式で書くブログです。

Q.特任教授ってかっこいいですね。求人情報をみるとこれはいけそうかもと思ったので私も大学教授になれそうですね?(60代 校長)

Q.JRECINで求人情報を見たところ、某私立大学の実習指導センターの特任教授の募集がありました。特任って「警視庁特命係」みたいな感じでかっこいいですね。求人情報をみると「学士可。学校現場経験20年以上の方求む」という感じだったので、私に当てはまり、これはいけそうだと思いました。このようなポストならば、私も大学教授になれそうですよね?研究もバリバリして日本の教育界を変えていきたいです。(60代 校長)

 

A.特任教授は、名前は格好いいですが、一般的な教授とは職域や待遇がまったく異なります。

 

こんにちはツバサ教授です。

「特任」の在り方は教育分野に絞っても、大学によって違うようなので一概には言えないのですが、一般的な教授としてイメージするのはおやめください。

ただ、学校教員から大学教員へのキャリアを考えるならば避けては通れない重要な職種です。

 

「一概には言えないのですが」の前提で以下お読みください。

 

今回の求人では、教育実習センターの特任教授を募集されているとのことでした。

実習センターとは、学生が教育実習に行くための事務や事前・事後、実習中の指導を担っている部署です。

そこで、現場の経験を生かして、実践的な指導をすることを求められています。

また、教員採用試験対策(特に2次の模擬授業や面接の対策)を期待されている大学も多いようです。

 

そのため、研究と教育を本務としている専任の大学教授とは異なる職種です。

 

一般的に、特任は研究は業務に入っていません。教育のみを期待されています。個人研究費も支給されない大学が多いのではないかと思います。

 

一般的に、特任は任期付きです。1年あるいは数年の契約です。専任の場合は、数年のテニュア・トラック(任期なしに移行する前の試用期間)があったとしても任期なしで、定年まで勤められます。

 

一般的に、9時~17時など定時の時間勤務です。(専任の多くは裁量労働制です。)

 

一般的に、個人研究室はなく、実習センターのような部署に、学校の職員室のような形で勤務します。

 

一般的に賃金は専任教授よりも安いです。大幅にと思っておいた方が安全です。

 

相談者様が、後進の学生の指導がしたい。実習や教員採用試験の指導がしたい!ということであれば、是非ご活躍いただきたいです。定年後に自分の力を生かして働きたいからと考えてらっしゃる場合も、お力を発揮いただけると思います。

 

また、もし、相談者様が、専任の大学教授を目指しているとしても、そのステップになる可能性はあります。

大学における教歴として扱われますし、大学の研究紀要に投稿する権利あるいは、実習センターで独自に紀要を出している場合も多いので研究業績を積むことができる可能性があるからです。

 

ただ、率直にいって、60代で少し研究業績を積んだだけでは、専任のポストに滑り込むことは難しいです。そのようなキャリアを目指して入ってこられた60前後の退職校長(副校長)を3人知っていますが、3人ともいまのところ専任の教員にはなれていません。

専任教員に就いてからさらに研究業績を増やしてくれるであろう若手と比べて、相当厳しいです。

 

というわけで、実習センターのような特任のポジションは、

①(不安定で、待遇も良くなさそうですが)最後のキャリアとして、後進を育てる教育がしたい方

②若手の学校教員(30代くらいまで)で大学における教歴と研究業績を積みたいので、とりあえずでも大学に入りたい方

(このブログのターゲットからは外れますが)③実践研究を盛んにやっているポストドクター等で、専任のポストを狙っている方

のポジションといえると思います。

 

一般の人には「警視庁特命係」のように見えるかっこいい「特任教授」ですが、(専任の)大学教授とは大きく異なり、役割は限定されているのです。

 

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以下、ちなみに……

 

ちなみに、教育学以外の分野で「特任教授」として盛んにテレビに出演され、ニュースのコメンテーターを務めてらっしゃる方をよく見ます。

この方々も研究は職務にはいっておらず、率直にいって、大学の「広告塔」がメインであるケースが多いと思います。講義もあまりしていない場合が多いのではないでしょうか。(もちろん多いということで、特任でも、しっかり大学で研究も教育も担っている方もいらっしゃるかもしれません。)

 

ちなみに国立大学の場合は、「実習センター」のような組織でも専任の教員のポストがしっかり設けられている場合があります。ここには実践研究を盛んにやっている研究者が座っていることが多いです。まれに、学校教員出身のスター選手がいらっしゃることもありますが、あくまでまれだと思います。

 

ちなみに旧帝国大学のような研究大学の教育学分野における、特任講師、特任助教というポストは、その大学出身のいわゆるポストドクターが務めていることが多いです。

これは、企業などからの寄付金は入った時などに、臨時で(すなわち任期付きで)ポストが発生したために、専任の大学教員になる前の状態の若手がそのポストに入るからです。

 

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大学によって、違うかもしれませんので、違う見方を持ってらっしゃる、教育関係大学教員の方がいらっしゃいましたら、コメントしていただけると幸いです。特に、地方は違うのかもしれないなと思いつつ、狭い経験の範囲で話している可能性がありますので、気になっています。

※本ブログ的には、基本的には教育分野の特任に絞って展開しています。